昭和6年12月に制式機となり合計450機程が製作されたと言われる九一式戦闘機は、その約一割の45機が愛国号として献納されています。
陸軍資料や『国防大写真帖』によれば、「九一戦、九二偵が7万円(発動機付き)」となっています。

 九一戦は垂直尾翼左面(機首方向に向かっての左面)に製造番号、右面に製造年月が描かれており、写真などから表に示すことが分かっています。試作機等の製造番号が101からなので、愛国3「小布施」号(製造番号114)は通算14号機でしょうか。
製造番号と愛国号番号が一致していないのは、『国防献品記念録』に記載されていている献納手続き順番と愛国号番号が一致していないのと同じで、献納順と製造番号も一致していないため、どういう風に機体が愛国号に割り当てられていたのか興味深いところです。
製造年月は中島が漢数字を、石川島がアラビア数字を用いているようです。

献納順愛国号機種製造番号製造年月製作所愛国書体 命名式期日・場所 
中島石川島
  1  3 「小布施」 前期型  114        S7.3.6、代々木
  2  9 「河野」 前期型  124        S7.4.10、代々木
  3  7 「群馬」 前期型  117       S7.3.8、高崎
  4  8 「川喜多」 前期型  121        S7.4.3、津
  5 13 「石川」 前期型  125 昭和七年三月      S7.5.8、金沢
  6 17 「岡山」前期型  128        S7.4.24、姫路
   (継承機)前期型  261 昭和八年二月       
  7 18 「第十師管山陰」 前期型  126 昭和七年三月      S7.4.24、姫路
  8 14 「若越」 前期型  127         S7.4.29、鯖江
  9 24 (本機は記載無し) 前期型  140 昭和七年六月      S7.6.19、所沢
 10 29 「北海道」 前期型  137        S7.6.24、札幌
 11 27 「千葉」前期型  133        S7.5.21、下志津
    (継承機)  169         
 12 38 「京都」 前期型  142       S7.6.26、京都
 13 37 「小布施」 前期型  141       S7.6.19、代々木
 14 39 「信濃」 前期型  147       S7.7.17、長野
 15 41 「愛媛」 前期型  148       S7.7.24、松山
 16 33 「福山」 前期型  145       S7.7.24、広島
 17 34 「浜田」 前期型  149       S7.7.24、広島
 18 47 「大分」 前期型  168       S7.10.14、大分
 19 50 「熊本」 前期型  173 昭和七年九月     S7.10.12、熊本
 20 53 「大和」 前期型  166       S7.10.3、奈良
 21 54 「岐阜」 前期型  165       S7.9.18、岐阜
 22 55 「秋田」 前期型  160       S7.10.12、秋田
 23 51 「新潟」 前期型  161       S7.9.11、新潟
 24 48 「佐賀」 前期型   昭和7年8月     S7.10.13、佐賀
 25 62 「満州」 前期型  180        S7.11.27、新京
 26 63 「満州」 前期型  181        S7.11.27、新京
 27 52 「新潟県」 前期型  162 昭和七年八月     S7.10.20、高田
 28 61 「和歌山」前期型  170        S7.10.16、和歌山 
   (継承機)前期型  601 昭和9年3月      
 29 58 「小倉」前期型  171        S7.11.28、小倉
    (継承機)前期型  153 昭和七年八月      
 30 69 「富国」 前期型  253        S8.3.10、代々木
 31 73 「東京瓦斯」 前期型  254        S8.3.10、代々木
 32 60 「金鵄」 前期型  176        S8.3.10、代々木
 33 77 「三越」 前期型  243       S8.5.14、代々木
 34 78 「日清紡」 前期型         S8.5.14、代々木
 35 74 「山梨」 前期型  255       S8.4.28、山梨
 36 83 「東電」 前期型         S8.5.14、代々木
 37 84 「田村」 前期型         S8.5.7、大阪
 38 87 「佛立」前期型         S8.5.7、大阪
   (継承機)後期型  517       
 39 86 「産業協働第一」 前期型  251?       S8.5.7、大阪
 40 88 「通運」 後期型  564       S8.7.26、代々木
 41 85 「全国民」 前期型  244       S8.5.14、代々木
 42 90 「第二千葉」 後期型  565       S8.8.2、下志津
   (継承機) 後期型  330 昭和八年八月     
 43 93 「福岡市」 後期型  579 昭和8年11月     S8.12.2、福岡
 44 111 「大学高専」 前期型  541        S9.3.23、代々木
 45 113 「産業協働第二」 後期型  347        S9.4.22、所沢
   (継承機)前期型  597 昭和9年3月       

 ・献納順は『国防献品記念録』による
 ・製作所は『航空事情』(各号)によるが、誤記も幾つか見受けられるので、正確かどうかは不明